双華姫~王の寵姫~
王の発言から10日が過ぎた。



王の放った言葉のおかげで、那智は今とても困った事になっている。




噂を聞きつけた女官達は喜び、那智の下に「おめでとうございます」と言いに来た。



…何一つめでたくないのに。





噂を聞きつけた他の姫達からはトゲトゲしかった空気が更に酷くなり、嫌がらせが後をたたない。…来るなら正々堂々きやりと思う。





噂を聞きつけた姫達の家元からの刺客の数がぐんと増えた。…心底迷惑。




最後に…噂を聞きつけた柚那から文が届いた。…精神的にきた。



王の嫌がらせとしか思えない発言により、那智の置かれた状況は悪化の一途を辿っている。




王の訪れがない間は、まだどこかで安心していた姫達やその家族の敵意はいやま剥き出し状態である。



ため息とため息とため息しか出てこない。



那智は机の上にある柚那の文をめくった。届いてから間もないその文は、何度も読んだ為かしわくちゃになっている。




《愛する那智へ



後宮から遥か遠いこの地まで、那智の噂が届きました。




今ならまだ間に合うはずです。





那智…那智の事を梅の下で待っている人がいるはずです。》


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