双華姫~王の寵姫~
「志高様・・・この後宮で生きていくには・・・我慢も必要ですわね」



那智の顔が曇る。そんな那智の様子に志高の顔も曇る。




「そんなに顔が曇るほど・・・私と寝るのは嫌か?」



自分でも聞いた事のない声に、那智だけではなく志高自身も驚く。


一人呆然としている志高を眺めながら、那智は手を休めることなく寝る準備をしていく。



「嫌と言うか・・・男の方と寝たことがないので・・・落ち着きません」




たくさんの時を過ごした愛する人とも一緒に寝た事はない。


いつも一人で寝ている場所に、男の人がいれば・・・落ち着くはずがない。それに・・・




「恥ずかしいではないですか・・・」



そう言って下を向き顔を赤くする那智は、志高から見ても分かるくらい顔が真っ赤だった。



初めてみる那智の姿に志高も少しだけ嬉しくなる。



那智が後宮に来てから、しっかりしているところはよく見るが、年相応の姿と言うものはあまり見たことがない。あの泣いている時以来だろう。




こうやって見れば15歳に見えるんだなと思いつつ、志高は那智を観察している。しかしニヤけてくる顔を止めることはできない。




「志高様!人の悪い顔をしています。どうせお子様だと笑いたいのでしょう」



頬を膨らませる那智は何とも可愛らしい。



「違う。那智華でも、そんな顔をするんだなと思ったら・・・」





面白くてとは続けられなかった。那智の目が光ったからだ。けれども志高の顔から正確に気持ちを読み取った那智は更にむくれてしまう。




「し・こ・う・さ・ま」




端から見たらバカップルの馴れ合いにも見えてしまう二人だったが、ここに突っ込む者はいない為止められる事もない。


< 65 / 207 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop