双華姫~王の寵姫~
抱きしめる力が強くなる。



-ダン-



那智が思いっきり志高の足を踏む。



「お前・・・仮にも私は王だぞ!」



踏まれた足を擦りながら、志高は那智の顔をにらむ。



「嫌がる女子を無理やり抱きしめる、変態男が悪いのです」



王を変態呼ばわりする那智に、志高の目が細くなる。



「憎たらしい口を叩くのはこの口か!?」



凄く良い笑顔で口を引っ張られる・・・。



「ひーたーひーでーふー」



何を言っているのか自分でも分からないと思いながらも、引っ張る志高の手を一生懸命引きはがそうとする。・・・が男性の力は強いもので、なかなか離れない。




口が裂けるかと思った時に志高の手が那智から離れた。




「頬が赤いぞ?」



何食わぬ顔で言い放つ志高に、本気で那智は刺客を送りつけようかと思ってしまった。




・・・那智が送らなくても、父が嫌がらせをするかと自分に言い聞かせ、この時那智は自分を保った。




「それで・・・いつ発表するんですか」



遊びは終わりだと言わんばかりに那智の顔が変わった。


その発表後・・・那智の人生は今まで以上にめんどくさいものに変わる。




できる事なら引き延ばしておきたいが・・・時間はそうもらえないだろうと考えていた。




(引き受けると言った以上仕方ないこと・・・ですね・・・)




今までどれだけのモノを仕方がないと諦めてきただろうか・・そう思うと少しだけ泣きたくなる。



どれだけ自分に言い聞かせても・・・仕方がないと諦めきれないモノなどたくさんあった。




志高からの返事を待つ時間がすごく長く感じる。



「・・・・・・・」




無言でお互いを見つめあっていると、志高が口を開いた。



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