双華姫~王の寵姫~
「龍・・・・妾はもう・・・死ねぬ・・・」


死ぬ自由さえなくなった。


志高には那智がそういっているように聞こえた。


志高が「死ぬな」と言った時、那智は「死なない」と約束してくれた・・・那智は笑っていたから、生きる事を決めてくれたのかと思っていたが・・・違ったのかもしれない。


(・・・・死ぬことすら・・・できなくした・・?)


今この時も志高の耳には那智が龍を呼ぶ声が聞こえてくる。


自分の安らぎの為に那智を後宮に・・・朝廷に・・・暗い場所に閉じ込めた。


そんな志高が・・・那智にかける言葉はなかった。



志高が那智にばれないようジッと見ていると・・・・那智が舞を舞い始める・・・。


舞はできないと言っていた那智・・・しかし見事な舞だった。


舞っているのは「梅恋華」叶わぬ恋の舞。


その舞を捧げる相手は・・・ここにはいない・・相手。


那智の舞が見れるのは・・・葛城龍だけだった。
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