双華姫~王の寵姫~
那智は幸也の悲しそうな目を見るのが辛かった・・・。


幸せだった自分を知っている幸也に、今の那智がどう映るのか・・・それが怖くて・・悲しくて。


「幸兄様・・・妾・・・今度の宴にでるんですよ・・・」


幸也も朝一番で王から聞いていた。


(那智ちゃんが・・・・正妃・・・・)



それはもう二度と那智に自由が訪れない事を指している。


「うん・・・・。聞いたよ・・・那智ちゃんは・・・」


それで良いのか?そう聞きたいが・・・聞けるはずもない。



良いはずないのは・・・幸也にだって分かるのだから。



気まずい空気を打ち壊すかのように那智は幸也に向き直る。



「宴では久しぶりに父や兄に会えるのです!楽しみですね」



文は頻繁に届くものの、会うのは久しぶりな家族に那智の心も少しだけ浮上する。



「だから・・・・幸兄様がそんな顔しないで下さい」



那智の言葉に幸也は止まってしまう。
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