双華姫~王の寵姫~
那智がさした鏡を見てみれば・・・自分の顔は自分でも驚くほど泣きそうな顔をしている。



「幸兄様がそんな顔をしていては・・・私まで泣きたくなります」


優しかった有栖川の双子姫はいつもいつも誰かの為に泣いていた。


自分の痛みや辛さには鈍感なくせに、人の痛みには敏感で・・・その優しい心を痛めていた。



「私はもう大丈夫ですから・・・だから・・・・」



那智は続きをいう事ができなかった。


幸也も聞く事ができなかった。


ただ・・・言わなくても伝わる。


(龍を頼む・・か・・・)


そして・・・那智が一番聞きたかったことを幸也は知っている。



「あっ!!幸兄様・・・そろそろ時間ですよ?」


那智がそう言えば、時間は結構立っている。


昔馴染みとは言え、男の自分がずっとここにいては那智の評判を傷つけるだけだろう。


そう判断し部屋を出ようとすれば・・・那智が扉の前まで送ってくれる。


「ではまた」


そう微笑む那智に・・・幸也は一言だけ告げてその場を去った。


「那智ちゃん・・・アイツは元気だよ」


それだけで那智には伝わるだろう。
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