双華姫~王の寵姫~
幸也が那智に言葉を置いて行ってくれてから・・・宴まではすぐに過ぎた。


「那智姫様・・・・とても綺麗です」



女官たちが鏡の前にいる那智を見て、口々に褒める。



宴の数日前に・・・那智を王の隣に座らせると後宮に志高が知らせた為、そこからは地獄の日々だった。



女官たちは喜び、姫達は妬み・・・・鉢のむしろを歩くような日々。



鏡の前にいる自分を見てみても・・・疲れ切っているとしか思えない、



支度をしてくれた女官に礼を言い、那智は美沙だけを残し退室してもった。



「美沙・・・・まるで妾は本当の人形のようだな」



美沙に言っても仕方ないと分かっているのに・・・自嘲がもれる。



着飾られるだけ着飾られ・・・自分の気持ちはおかまいなし。


これでは・・・本当にただ生きているだけの人形だ。


「那智姫様・・・・・」


美沙にも言いたい事は通じたのだろう。美沙の顔も曇る。
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