双華姫~王の寵姫~
「主上・・・お久しぶりですね?」


那智の父が初めに志高に声をかける。


その瞬間志高の顔が一瞬引きつったのを那智は見逃さなかった。


志高が当たり障りのない返事をすれば、那智の父はすぐに那智に向き直る。



有栖川当主が娘と妻を溺愛しているのは有名な話だ。



「那智・・・久しぶりだね」


少し前までは、毎日のように見ていた父の笑顔が那智を見つめている。



「父上・・・・お久しぶりです」


涙が落ちないよう父を見れば、父は懐かしそうに那智の髪を撫でてくれる。



「柚那から文を預かって来たよ」


父が志高の方を向き、ここで渡しても?と問えば、志高も好きにしろと頷く。


父から受け取った文からは・・・懐かしい柚那の香が那智の元に届く。



「柚那の文にも書いてあると思うが・・・・」


父はそこで言葉を切ると・・・申し訳なさそうに那智の方を見る。



「柚那の輿入れが決まったよ・・・森ノ宮の次男柊也殿の元へ」



森ノ宮柊也・・・柚那がずっと思い続けた相手だった。
< 96 / 207 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop