双華姫~王の寵姫~
「はい。主上。何か?」


蓮は那智を抱きしめたまま、志高を振り返る。


志高の目が睨むように蓮を見ているが、蓮はお構いなしだ。


「久しぶりの妹との再会・・・邪魔しないでくださいますか?毒物や刺客が送られていると聞いて、どれだけ私が那智を心配していたか・・・・もし那智が死んだら・・・私は殺した者を地の果てまでおいかけて・・・必ず私の手で始末してやります」


それは志高に言っているようで、那智を狙う家の者達への牽制だった。


志高もそれは分かったのだろう。


その事については咎めもせず聞いている。しかし・・・未だ抱き着いているのは面白くない。


「おい。那智は正妃になったんだ。離れろ」



志高が蓮から那智を奪おうとすれば、蓮は那智を抱く手の力を強める。




「正妃と言う前に、那智は私の大切な大切な妹です。むしろ私はあなたの兄になったのですか
ら、少しは兄を敬ったらどうですか?」



見ている方が胃が痛くなる言い合いを始める。



那智はあまりに子どもっぽい二人に笑えてくるが、ここは宴の席である、



まだまだ挨拶を待つ人は多い。



このまま見ておくわけにはいかなかった。




「一兄様・・・・お気持ちは嬉しいです。でも・・・・まだ待っている方もいらっしゃいますので・・・」


そろそろ変わってくださいね?と那智が笑えば、蓮はしぶしぶだが那智を離し席に戻っていく。


見ているだけだった那智の父も、去り際に爆弾を落とし下がった。


「主上・・・ではまた・・・文を出しますね?」


その時志高の体が停止するのを那智は確かに見た。





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