それでも、まだ。



『酷いなぁ、アヴィルさん。今から面白くなる所だったのに。』



『酷くも面白くもねーよ。ったく……マダムに聞いて来てみれば…。』


アヴィルは頭をガシガシ掻きながらぶつぶつ文句を言った。




事態を飲み込めていないジルとセシアに、神田は黒猫を抱えて近寄った。


ジルとセシアはビクリと肩を上げたが、神田はふわりと笑った。



『この子は、幽霊でも3つ目の猫でもないですよ?…ほら、よく見てください。』



『『石……?』』



黒猫の首には、目の色と同じ藍色の石がキラキラと光っていた。



……つまり。



『この石を目と勘違いした、と……?』



セシアがゆっくり言うと、神田は苦笑いを浮かべながら頷いた。



『…じゃあ、噂は?』



『それは、勝手に話が広がってしまっただけだそうです。レンさんがさっき調べてました。』



…急に恥ずかしくなってきた。

隣にいるジルも、顔を引き攣らせている。



『セシアもジルさんも…、本当にすいません。驚かせてしまって…。レンさんに頼まれて断れなくて。』



神田が謝っていると、レンが嬉しそうに歩いてきた。



『いや〜、最高だよ2人共!ジルなんかお経唱えてたよね。セシアも涙目だったし。』



屈託のない笑顔を向けるレンに、ジルとセシアはぷるぷる震えながらずっと俯いていた。


が、次の瞬間。



『なにが最高ですかぁぁ!どれだけ怖い思いしたと思ってるんですかぁぁ!』


『全くだ。無線くらい応答しろ……!』


ジルとセシアは同時に全力でレンに刀を振り落とした。…その表情は真っ赤であったが。



レンは爆笑しながら、2人の攻撃をかわしながら逃げていく。


そしてその後を、2人が刀を振り回しながら追いかけていく。




『おい、此処で暴れてんじゃねぇよ!うるせぇだろうが!!』



『アヴィルさんの方が五月蝿いですって。』



『なんだとレンてめぇぇ!!』



『……はは…。』




…ようやくみんなで無事に組織へと帰ることが出来たのであった。




< 103 / 212 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop