それでも、まだ。
『酷いなぁ、アヴィルさん。今から面白くなる所だったのに。』
『酷くも面白くもねーよ。ったく……マダムに聞いて来てみれば…。』
アヴィルは頭をガシガシ掻きながらぶつぶつ文句を言った。
事態を飲み込めていないジルとセシアに、神田は黒猫を抱えて近寄った。
ジルとセシアはビクリと肩を上げたが、神田はふわりと笑った。
『この子は、幽霊でも3つ目の猫でもないですよ?…ほら、よく見てください。』
『『石……?』』
黒猫の首には、目の色と同じ藍色の石がキラキラと光っていた。
……つまり。
『この石を目と勘違いした、と……?』
セシアがゆっくり言うと、神田は苦笑いを浮かべながら頷いた。
『…じゃあ、噂は?』
『それは、勝手に話が広がってしまっただけだそうです。レンさんがさっき調べてました。』
…急に恥ずかしくなってきた。
隣にいるジルも、顔を引き攣らせている。
『セシアもジルさんも…、本当にすいません。驚かせてしまって…。レンさんに頼まれて断れなくて。』
神田が謝っていると、レンが嬉しそうに歩いてきた。
『いや〜、最高だよ2人共!ジルなんかお経唱えてたよね。セシアも涙目だったし。』
屈託のない笑顔を向けるレンに、ジルとセシアはぷるぷる震えながらずっと俯いていた。
が、次の瞬間。
『なにが最高ですかぁぁ!どれだけ怖い思いしたと思ってるんですかぁぁ!』
『全くだ。無線くらい応答しろ……!』
ジルとセシアは同時に全力でレンに刀を振り落とした。…その表情は真っ赤であったが。
レンは爆笑しながら、2人の攻撃をかわしながら逃げていく。
そしてその後を、2人が刀を振り回しながら追いかけていく。
『おい、此処で暴れてんじゃねぇよ!うるせぇだろうが!!』
『アヴィルさんの方が五月蝿いですって。』
『なんだとレンてめぇぇ!!』
『……はは…。』
…ようやくみんなで無事に組織へと帰ることが出来たのであった。
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