それでも、まだ。
訪問と勃発
『あー…ないなぁ、これも違うし…。』
墓場騒動から一夜明け、神田は行くのが習慣となっている書斎にいた。
ただ、いつもとひとつ違うのは、本を読むために書斎にいる訳ではないことである。
『やっぱりないか……。』
神田は座り込んで両手を後ろにつけて上を仰いだ。
『なんかこの組織についての本とかあると思ったのにな…。』
神田はピラリとセシアの写真を取り出して、じっと見つめた。
――組織のことを、もっと知りたい。
そんな思いから、この行動は始まった。主に、例の写真のことが理由となっているのだが。
神田は手当たり次第に本を漁っていたが、目当ての本はなかなか見つからなかった。
100年くらい前までのことなら本は多少ながらもあったのだが、ここ数10年くらいについての本はまったくなかった。
『幹部の人達にはこの写真はやっぱり聞きづらいし…。』
今、幹部達とアヴィル、ベルガは上の階で週に1回の会議中である。会議と言っても、この世界の現状や仕事の内容を確認したりしている程度のものらしい。
さすがにその会議には神田は参加出来ないため、こうしていつも一人書斎にいるのである。
…いや、今は一人と言っては語弊がある。
『…にゃー…。』
『あ、シロ、クロ。…お腹空いたの?』
墓場で出会った2匹の猫が仲間入りしたのである。
アヴィルは最初反対したのだが、レンに言いくるめられ、こうして一緒に暮らすこととなったのだ。
ちなみに名前は白猫がシロで、黒猫がクロである。…なんとも捻りが何もない名付けであるが。
神田がぼんやりとしながら2匹を撫でていると、不意に後ろで書斎の扉が開く音がした。
『…あれ、ジルさん?』
神田が振り向くと、少し神妙な顔つきをしたジルが顔を覗かせていた。
会議中ではないのだろうか。
『…神田、ちょっと来てくれないか?』
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