それでも、まだ。
襲撃と混乱
『…………。』
地下室にいる神田は一人じっと息を殺して隠れていた。
部屋の奥の、多くの段ボールが積み上げられて出来た物陰の隅っこで。
上からは、ドォォォォンと絶え間無く地響きが聞こえ、部屋全体が震えている。
『…ジルさん、マダム、ベルガさん……。』
月光も届かず、天井から吊された蝋燭の僅かな明かりしかない地下室で、神田はしゃがみ込み、小刻みに震えながらぽつりと呟いた。
辺りの空気はひんやりとしていて、神田以外の気配ひとつ感じられない。
にもかかわらず、神田は物音を少しでも立てないように細心の注意を払っていた。
『…どうか無事でありますように…。』
ぎゅっと両手を胸の前で握りしめ、神田は先程までのことを思い返していた。
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『……うわぁ…。』
神田とジルがベルガに頼まれ、地下に行き、借りた鍵で部屋の扉を開けると、そこには様々なものが沢山置かれていた。
神田が驚きの声を上げて辺りをきょろきょろと見ると、武器や防具、火薬に何やら怪しい液体…とにかくいろいろなものが揃っていた。
『…地下は組織の物置のようなものだからな。必要なものは大体此処にあるんだ。』
ジルは部屋の電気をつけながら説明すると、部屋の奥へと進んでいった。
『……こっちだ、神田。』
『…はい!』
神田は後をパタパタと追って行きジルの隣に並び前を見た。
『…箱?』
そこには綺麗に並べられた8個の箱があった。
ジルは前へ出て、ひとつの箱に近づくと、その中に手を入れた。
『…これはベルガさんとアヴィルさん、そして俺達幹部の専用の武器入れだ。各々の武器が此処に入っているんだ。』
『…え?でも皆さん、刀は常に持っていますよね?』
神田も箱に近づいて行きながら尋ねると、ジルは箱から手榴弾を取り出した。
『…いつ何があるか分からないから刀だけな。此処にあるのは爆弾とか、そういう細かい武器だ。任務のときに必要なんだ。』
『そうなんですか…。』
神田が箱の中をよく見ると、それぞれの箱に手榴弾、銃、短刀など、様々な武器が入っていた。
そこで神田はあることに気づいた。
『…そういえば幹部は6人って言ってましたよね?ジルさんにレンさん、シキさんにマダム、そしてセシア……。じゃああと一人って…?』
神田が不思議に思って言うと、ジルは箱の中に手を入れたまま暫く黙っていたが、やがて静かに口を開いた。
『あと一人の幹部は……、今行方不明になっているんだ。』
神田は目を見開いた。
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