それでも、まだ。
――ガッシャーンッ!
『………っ!』
揺れで部屋のどこかで何かが倒れて床に落ちた音がした。
神田は思わずビクリと肩を震わしたが、自分自身を落ち着けるように深呼吸すると、握っていた両手をそっと広げた。
掌はじっとりと汗ばんでおり、乗っている十字架がうっすらと蝋燭の光で照らされている。
『…きっと大丈夫…。』
神田はぽつりと呟くと、ぎゅっと目をつむった。
――あれからどれくらい時間が経ったのだろうか。
もしかしたらジルが出て行ってからそれほど時間が経っていないかもしれないが、神田にはとても長く感じられていた。
皆のことを信じているが、未だに鳴り止まない爆音と地響きに神田は不安を拭いきれなかった。
『(…考えるのは止めよう。)』
皆は強い。
それは自分の目で見たことがあるのだから確かではないか。
…でももしジルさんやマダムが負傷してしまったら?
ベルガさんの怪我が酷いものだったら――…
『…あぁぁぁ!やめやめ!考えるのやめ!!』
悪い思考に行こうとする頭をぶんぶんと振ると、ちょっと部屋の中でも探索してみようと神田は腰を持ち上げようとした。
――そのとき。
――ドガァァンッ!
『――…!?』
神田は悲鳴を上げそうになったのをなんとか抑え、咄嗟にまたしゃがみ込んだ。
部屋の扉を壊されたのだ。
神田の前には段ボールがあるので扉の方は見えないが、通路からの光によって、誰かの影が床に伸びているのは横に見えた。
『(誰……?)』
幹部ならわざわざ扉を壊さなくても、レバーを引けば開くはずだ。
幹部じゃない人だとしても、これほどまでの力を出せるだろうか?…幹部でさえ簡単には壊せそうになかった扉を、一撃で。
神田はなんとなく身の危険を感じ、見つからないように更に部屋の奥にゆっくりと行こうとした。
……のだが。
――キィィンッ!
『――あっ…!』
手を滑らせ、手に持っていた十字架をつい落としてしまった。
音は思いの外響き、神田がしまった、と思ったときにはもう遅く、影は真っ直ぐに神田の方へと近づいてきた。
そして――…
『…見つけましたよ、人間のお嬢さん。』
神田は黒いマントを被った男に見つかった。
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