それでも、まだ。
―――――
ジルは固く閉じている組織の正面門で張り付いて待機しながら、外の様子を小さな隙間から見遣っていた。
『…あれから何分たった?』
そのままの状態で静かに言うと、隣に一緒にいた部下が時計を見ながら答えた。
『…もうじき30分です。ジルさん、埓が明きません。』
『…………。』
ジルは黙って刀の柄を強く握りしめ、小さく息を吐いた。
――ジルが地下から上がってきてそのまま組織の入口の方に向かったとき、待っていたのか、部下数名が走り寄ってきた。
ジルはその姿を一瞥し、敵を倒すためすぐに組織の外へと出ようとした。
――…のだが。
『…なんで村人たちが…。』
ジルは外を見たままぽつりと呟いた。
組織の外でこちらに向かって爆弾などを投げつけてきているのは、見覚えのある村人たちだったのだ。
顔をよく見てみると、確か今日レンたちが行く予定の村の隣の村人であるように思われる。
ジルが知る限りでは、こんな横暴なことをするような人々ではなく、むしろ温厚で協力的な人々だと思っていたが……。
しかも村人たちは組織の門を壊そうとするのではなく、周辺を爆破し、まるで威嚇しているかのようである。
ちらりと視線を村人からずらすと、自分たちと村人の間に爆弾によって崩れてしまった塀の瓦礫がいっぱいに散らばっていた。
『…確かに埒が空かないな。…おい、扉を開けろ。』
ジルが再び隣の部下に言うと、部下は驚いたように目を見開いた。
『…え?闘うのですか?』
『…いや、村人は傷つけない。…俺が外に出たら、また直ぐに扉を閉めろ。お前らは中で待機していろ。』
ジルの返事に、部下は困惑した表情を浮かべたが、ジルは構わず続けた。
『いいから早くしろ。…あと、レン達に連絡を頼む。…ベルガさんが負傷して、俺とマダムがどこにもいないってな。なるべく焦った感じで伝えた方がいい。』
『………?』
怪訝そうに眉を潜めながらも、黙って作業にいった部下に内心感謝しつつ、ジルはちらりと周囲を見渡した。
任務に出ている者がほとんどで、組織内にはあまり人が残っていないのだろう。
先程から周囲では同じ顔触ればかりが走り回っている。
――まぁ、これでレン達はすぐに帰ってくるだろう。
ジルは少し息を吐くと、懐から無線を取り出した。
.