それでも、まだ。
『……ふぅ。雨だと力があんまり出なくていけないや。』
スタンと着地したレンの横では、先程の攻撃によって穴が出来ており、中からは黒い煙が立ち上っている。
『…しかも何?ジルはちゃんといるじゃん。騙されたの?僕たち。』
『…ああ、その方が早く帰ってくると思ってな。』
ジルが真剣に返すと、レンはガクリとうなだれた。
『あ〜、それならリーヤを追いかければよかったな〜。』
レンの言葉に、ジルはピクリと肩を揺らした。
『…リーヤもいたのか?…というか、シキとセシアは…?』
『うん、それがさ…』
『ギャハァ!!』
『『――!』』
2人がバッと穴の方を見ると、ペトラルカがボロボロになりながらも穴から出て来ていて、こちらを睨んでいた。
その目は狂気に満ちている。
『…結構しぶといなぁ…。』
レンが呆れながら刀を担いだ。
『…いや、待て。様子がおかしい。』
レンとジルが慎重ににじり寄って行くと、ペトラルカは口でハァハァと息をしたまま、掠れた声で笑った。
『キャハ…ハハ…!……はぁ……も゛ぅ…手遅れだ…!…復讐は…ばじまってい゛る…!』
レンとジルは顔を見合わせた。
『…君達は、何を企んでいるのさ?』
レンが前に出て刀を突き付けながら言うと、ペトラルカは身動き一つせずに目を見開いたままニヤリと笑った。
『いずれ…わかる゛さ…!…はぁ……嫌というほどな…!!』
そしてペトラルカは一瞬の内に懐から何かを取り出すと、2人に向かって投げつけた。
――ボンッ
『―!』
『…煙幕か…!』
咄嗟に身構えた2人であったが、やがて煙が晴れたときには、ペトラルカは忽然と姿を消していた。
『…逃げられたね。』
レンはため息をつくと、刀を静かに収めた。
『あの傷だ、大したことは出来まい。…それより、早く組織に戻るぞ。』
そう言って急に走り出したジルにレンは驚きながらも、慌ててついてきた。
『え、何?どうしたの?ペトラルカはもう帰ったじゃん。』
『…ベルガさんが負傷したっていうのは本当だ。…そして今は、神田が危ない。』
『――…!?』
レンは一瞬目を見開いたが、悟ったのか、すぐに元の表情に戻り、顔をしかめた。
『…今更何がしたいのさ、黒組織…!』
『…………。』
そして2人はびしょ濡れになりながら組織へと入っていった。
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