それでも、まだ。
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『…だ、誰ですか…?』
神田は声が震えるのを必死に抑えながら目の前に立つ長身の男に尋ねた。
男は真っ黒なタキシードを着て、長い裾と長髪の黒髪を扉からの風に靡かせながらゆっくりと微笑んだ。
その微笑みは感情が無く、どこか機械的で、神田を無意識に強張らせるものであったが。
『…そう、恐がらないで下さいよ。怪しいものではありません。』
男は困ったように眉を下げて言ったが、神田は依然として身体を強張らせしゃがみ込んだまま、男を見つめた。
2人の間では、十字架が不気味に蝋燭の灯を反射させている。
『…私は、シーホークと申します。曲がりなりにも、とある組織のボスなんですがね。』
シーホークと名乗った男は手を胸に当て、神田に向かって丁寧にお辞儀をすると、ゆっくりとその場に片方の膝をついた。
『……?』
神田が戸惑いつつその動きを見ていると、シーホークは不意に表情を無くした。
『…貴方は今、この世界について、知りたいと思っていますね。…死んだはずの友人の為に。』
『――…!』
神田は思わずピクリと肩を動かした。
シーホークは神田の反応に僅かに口端を上げると、そのまま続けた。
『…しかし思うように知ることは出来ない。……違いますか?』
『…ど、どうしてそれを…?』
神田を見つめる真っ黒な瞳を逸らせずにかろうじてなんとか応えると、シーホークはクスリと笑い、立ち上がった。
『…分かるんですよ。私も、貴方のような経験をしたことがあるんです。』
『………?』
再び神田が眉を潜めてシーホークを見上げると、シーホークは神田から目を逸らし続けた。
『…私も、かつてはこの組織と交流はありました。共に、力を合わせていた…。』
神田は話を聞きつつ慎重に立ち上がり、体制をゆっくりと立て直した。
『…しかし、それは私の勘違いだった…。私は利用されていただけだった…。』
シーホークが言い終えると共に、扉からの風が強くなり、側にある段ボールがガタガタと揺れた。
『ど、どういうことですか…?』
神田が恐る恐る尋ねると、シーホークは再び神田の方を振り返り、真っ直ぐに神田を見た。
その瞳はとても冷たく、神田は思わず後ずさった。
『……貴方は、騙されているんですよ。…この組織に。』
『――…!?』
神田はこれ以上ない程に目を見開いた。
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