それでも、まだ。
神田は目を見開いたままシーホークの言葉を頭の中で反響させていた。
――騙されている?私が?みんなに?
『…だから知りたいことも知れない。彼らが隠しているからです。』
息が自然と上がってきて、神田はじりじりと後ろに下がった。
『しかし、私たちの組織は違う。すべてを知れる。…友人を救える。』
ひんやりとした感覚が背中に伝わり、これ以上後ろへ下がることが出来ないことに神田は気づいた。
『…だから私達に力を貸して下さい。…神田真理さん。』
そう言って手を伸ばしたシーホークに、神田は震えながらもふるふると頭を振った。
『…どうしてです?このままでは、貴方も友人も、利用されるだけですよ?』
『…で、でも私は……。』
下を向いてそのまま黙ってしまった神田に、シーホークは足元に落ちていた十字架を拾うとクルクルとそれを指で回しはじめた。
『…確かに最初は信じられないかもしれません。しかし、いずれ分かることです。…貴方には傷ついて欲しくはない。…さぁ、行きましょう。』
そう言うとシーホークはゆっくりと神田の方へ歩み寄ってきた。
『――…!』
神田は震えながら再び後ろへ下がろうとしたが、背中をドンッとぶつけてしまった。
後ろと左には壁、右には積み上げられた段ボール、そして正面には歩み寄ってくる男――…。
倉庫の角に追いやられた神田には逃げる道も、またはその術もなかった。
だが、いざシーホークが神田に触れようとしたとき、不意にその動きが止まった。
『……?』
神田が若干涙目になりながら目の前まで迫ってきていた男を見上げると、男はやれやれといった表情で手を引っ込めた。
『…もう来ましたか。相変わらず聡い男だ。』
神田は言っている意味が分からずに首を傾げたが、シーホークがバッと後ろに下がった瞬間。
――スパァンッ!!
『きゃあ!?』
キレの良い音と共に神田の右側に積まれていた段ボールが崩れ光が差し込んだかと思うと――…
『ア、アヴィルさん……?』
アヴィルが神田とシーホークの間に立ち塞がっていた。
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