それでも、まだ。
『…相変わらずだなぁ、アヴィルさんは。』
アヴィルが出た後、レンは苦笑いでふぅと息を吐いた。
『…不器用だからねぇ。』
マダムもクスリと笑うと、そのまま神田たちに背を向けた。
『……真理。』
神田が呆然としつつちらりと目線を寄こすと、マダムは背を向けたまま口を開いた。
『…真理は、首を突っ込んじゃあいけないことに触れたがってる。…正直、こちらにとっては迷惑なんだよ。』
『ーーー!』
神田は思わず目を見開いた。
何か、重い石を頭の上に落とされたような感じであった。
マダムはそのまま部屋を後にし、続いてレンやジル、そしてシキも少し戸惑いつつ出て行った。
ーーー何を、自分は期待していたのだろう。
ポロリと神田の頬を涙が伝った。
もしかしたら、教えてくれるかもしれない。アヴィルは無理かもしれないが、他のみんなはーー…。
見開いたままの眼から、次から次へと涙が溢れ出した。
『…はは、迷惑、かぁ……。』
誰もいない部屋で、掠れた声を上げると、神田はゴシゴシと袖で涙を拭いた。
自分は、所詮外部の人間なのだ。
そんな人間に、内部を詮索されたら、確かに迷惑だろう。
あのジルの言葉も、ただの慰めだったのだ。きっと。
ーーーあなたは、騙されているんですよ。ーー
シーホークの言葉が頭によぎった。
『…………。』
神田は目を腫らしながらも、勢いよく立ち上がった。
どうせ外部の人間なら、みんなに気を使う必要もない。
みんなの言葉に、一喜一憂してもしょうがないのだ。
誰に騙されているかだなんて、自分で決める。
神田は決意したように、走って部屋を出て行った。