それでも、まだ。
『え……?』
神田は慌てて他のビデオテープも見てみた。すると、他のビデオテープにも同じようにセシアの人間のときの名前が書かれている。
ドクドクと、胸の動悸が激しくなっていっているのを感じた。
神田はビデオテープを入れるところを探し、それらしきものを見つけると、ためらわず入れた。
しばらくして、真正面にあった画面が切り替わった。
『結菜……』
そこに映っていたのは、紛れもなく神田の親友の姿であった。
恰好的にまだ中学生ぐらいであろうか。1人で学校へと向かっている。
神田は目を見開いたまま画面を凝視していた。
ビデオはどんどん進んでいき、今度は高校生になった結菜が現れた。まだ1人で。
神田は胸が痛くなった。結菜がずっと1人を好んでいた理由は今となっては神田には分らずしまいだったが、絶対に1人でいたいからそうしていたという訳ではなかったように思う。しかしそれを聞くのはいつもためらってしまいとうとう聞けずに結菜は亡くなってしまった。
しかし、しばらくビデオが進むと、結菜の隣に人が並んで歩くようになった。
神田自身である。
最初は迷惑そうな表情をしている結菜だったが、だんだんと2人で笑っている場面が増えていった。
神田は懐かしむような目でずっとビデオを見ていた。
と同時に、嫌な予感が胸に湧いてきているのが分かった。
―――どうして?
どうしてここにこんなに結菜についてのビデオがあるのだろうか。
ずっと観察していた?小さいころから?何のために?
神田の脳裏に悲惨な事件が蘇った。
――――石井結菜殺害事件
ある日を境にニュースでも取り上げられなくなり、ネットなどでもその事件そのものが消えたように情報すら無くなり人々の記憶から抹消された事件。
もしこの事件がこの黒組織と世界政府とやらが関わっていたとしたら?
神田は冷や汗が止まらなかった。
映像がすべて流れ終わってビデオテープがビデオデッキから出されて元の画面に戻っても、神田はしばらくずっとその場から動けなかった。