それでも、まだ。
――――――
『……アヴィル。』
『あ?…マダムか。どうした、何か分かったか?』
神田がいなくなってから5日が経ち、それぞれの幹部は情報を集めていこうと必死だったが、特に良い情報を得られる訳でもなく、ただ時間だけが経過していっていた。
セシアはただ焦りだけが募り、何も出来ない自分にもどかしさを感じていた。そして同時に、組織内も進展のないこの状況にピリピリしているのが手に取るように分かった。
今は会議室でアヴィルからレン、ジル、セシア、シキの4人が今日の任務について詳しく説明を聞いていたときであり、漆黒の森の上部を立ち込める闇について単独捜査していたマダムはゆらりと部屋に現れた。
『いや、闇については未だにちょっと調べかねているんだが…、例の薬の効能がわかったそうだよ。』
『……薬?』
思わずセシアが呟くと、隣にいたシキがあぁ、と頭の後ろに腕を組んだ。
『ちょっと前オレとセシアで廃墟から段ボール回収したやろ?その中に入ってたやつや。』
セシアが大量の段ボールを思い出しながら納得したように頷くと、アヴィルはズボンのポケットから煙草を取り出して火をつけた。
『そうか。どうだったんだ?』
アヴィルが少し眉間にしわを寄せていうと、マダムはピラっと一枚の紙をみんなの前に出した。
『…人間を即死させるものだそうだよ。しかも強力な、ね。』
紙には詳しい成分や効能が記述されていて、思わずみんな顔を顰めた。
『まあそういうものだとは思っていたけどね…どう思う?ジル』
レンが失笑しながら隣をチラリとみると、ジルは難しい顔をしながら口を開いた。
『…しかもあれは秘密倉庫に保管していた。そしてそれはまたシーホークの闇に飲み込まれて奪われてしまった。』
『おそらくその薬は黒組織が作ったものだろう。世界会議を狙うつもりだろうな。』
アヴィルは白い煙を吐き出しながら立ち上げった。
『世界会議で問題を起こすわけにはいかねえ。あと2週間ちょいの間に決着をつける。…お前ら、任務気を付けろよ。』
そう言って、アヴィルは出ていった。
『珍し~、アヴィルさんが気を付けろって言うの。』
レンが目を丸くしながら言うと、マダムが肩をすくめた。
『それほど危険ってことだろ、今調べていることは。…あぁあとセシア、医者が探してたよ、ちょっと一応怪我のところを見たいって。』
『あ、そうなんですか。後で行きますね。』
『ちゃんと行くんやでセシア~。みんなで行く任務は明日やな。じゃあ俺はちょいと修行でもしとくか。』
『僕たちも今日の任務行こっか、ジル。』
そしてそれぞれが部屋を後にした。