それでも、まだ。
『こんにちはー』
セシアがガラリと医療室の扉を開けると、そこにはお世話になった医者がカルテを持って待っていて、セシアを見てにっこり笑うと、ベッドの方へと促した。
『わざわざすみませんねぇ。その後いかがですか?』
『おかげさまで全然支障もないし、大丈夫です。』
丁寧に医者はセシアの左足を診て安心したようにほほ笑むと、ベッドから離れ、テーブルの引き出しから茶色い封筒を取り出してセシアに差しだした。
『これ、セシアさんがあのとき持っていた封筒です。渡し損ねていました。中身は見ていませんので。』
『あ…ありがとうございます。』
セシアはリーヤとの対峙を思い出しながらまじまじと受け取った封筒を見た。
―――すっかりこのことを忘れていた。
恐る恐る封筒の口を開き、中身を取り出すと、そこに入っていたのは綺麗な金色の石のかけらであった。首にかけられるようにネックレスのようになっている。
『何だこれ…?』
セシアはかけらを上にかざしたりしてよく見てみたが何の変哲もない石のようだ。
どうしてこの石をリーヤは奪おうとしたのだろうか。
何か特別な力でも秘めているのであろうか。…そのような力がある石には見えないが。
セシアはとりあえず持っておこうと思いそのネックレスを首にかけ、服の下に隠すと、医者にお礼を言って部屋を出た。