それでも、まだ。
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『アヴィルさーん!』
ノックもせずにズカズカと部屋に入ってきたレンに対してアヴィルは眉間にしわを寄せながらハアッとため息をついた。
『…おい、いつも言ってるだろ、ノックぐらいしろ。』
『やだなぁ、いつものことじゃないですか。いい加減慣れてくださいよまったく。』
『なんで俺がてめえに説教されなきゃなんねぇんだ、コラ。』
『まあまあ。はい、これ今日の任務についての事後報告です。』
アヴィルの小言に涼しい顔で流したレンは、数枚の紙を渡した。その紙には、今日殺し屋として、ジルとともに始末した者たちの名前が載っていた。
ひと通り目を通したアヴィルは、黙って煙草を取り出し火をつけた。
『…やっぱりこの時期になると人間への反逆者が増えますね。』
『…そうだな。』
この組織が殺し屋として始末するのは人間界を恨み、反乱を起こそうとする過激派のものたちばかりであり、世界会議がちかくなってくると、いつもこういった反逆者は増加していた。
『…いつもワリィな。』
ぼそりと放たれた言葉に、レンは呆気にとられた顔をしたが、すぐに呆れたような表情になった。
『今更何言ってるんですか。らしくないですよ~。』
レンは茶化すように言ったが、アヴィルは何も言わず煙草を加えたままずっと考え込んでおり、レンはふぅと息を吐いた。
『…僕もジルも、もちろん他のみんなも理由はそれぞれ違っても望んでこの組織にいるんです。アヴィルさんが悩むことでもないでしょうに。』
それだけ言うと、レンは踵を返して部屋の出口へと向かった。
『あ、あと煙草そろそろ灰落とさないと危ないと思いますよ~』
『え?…あっちぃ!』
レンはアヴィルが慌てて火を消すのを横目に、クスリと笑いながら部屋を出た。