それでも、まだ。
そうしている間に、一行は漆黒の森の前までやってきた。
近くで見ると大きな闇が立ち込めているのが鮮明にわかり、周囲を見ても闇がバリアのようになっており漆黒の森に入ることですら難しそうだ。
『…ますます闇の純度が上がってきているね。ちょっと待ってな。』
少し取り巻いている闇に触れそういったマダムは、素早く飛び上がって上空から漆黒の森を観察していた。
アヴィルやマダムの調査によると、漆黒の森はシーホークの強い闇に覆われていてマダムでさえもとても入れるような状況ではないが、ごく一部分だけ、その闇が届ききれてないのか闇が弱い部分があるらしいのである。
そこから侵入を試みる、というのが今回の狙いである。
他の幹部たちはマダムを見ながら待っていたが、しばらくするとマダムは戻ってきた。
『待たせたね。…向こう側の方が闇が若干他の場所に比べて弱いから、そこから入れそうだよ。』
その言葉で全員マダムが言っていた場所に近づくと、確かに他の所よりも闇は薄まっているように感じた。
『…よっしゃ、次は俺やな。あんまり木は破壊したくないんやけどな…許してや!』
シキは気合を入れるように言うと、闇が弱い部分に体を向け、しゃがみ込んで地面に片手をつけた。
『……フンッ!』
―――ズゴゴゴゴゴッ
シキが少し力を入れたかと思うと、その部分の地面が木と一緒に地割れして地中へと飲み込まれていく。
と同時に、覆っていた闇がゆらりと乱れたのが見て分かった。
『…!風車砲!』
その一瞬を見逃さずにセシアが刀を抜き、竜巻のような風で闇を貫くと、闇の一部分が消え、森の中が見えた。
『氷空間!』
そしてジルが刀を振ると、闇が消えた部分の周りの闇の表面が凍り、再び闇が覆い尽くしてくるのを防いだ。
『おお~さすがみんな。じゃあ入ろっか。』
流れるような協力で出来たわずかな空間から漆黒の森へと入ることができた皆であったが、次の瞬間。
―――バリィィンっ
セシアが思わず入ってきた方向を振り向くと、ジルが作った氷は割れ、再び闇で入口はふさがってしまっていた。
『…闇の浸食が速い。どんどん強くなっているのは本当のようだな。』
『え?これって帰るとき出られんのちゃう?』
『ま、なんとかなるんじゃないの?』
『ジルの氷が一瞬で割れちゃったねぇ。』
『…みなさん急ぎましょう。』
そして5人はマダムを先頭にして、漆黒の森の内部の闇が強く感じる方向へと歩き出した。