それでも、まだ。
『…だからか。』
マダムが納得したようにボソッと言うのを、セシアは聞き逃さなかった。
『何がですか?マダム。』
『いや、その…漆黒の森の内部の闇は完全にシーホークのものだし、段々強くなっているんだけと、外側にある覆ってる闇がね…、調べててシーホークの闇とちょっと違う闇が混じっているのが分かっててね、森の中心に行くほど弱くなってたんだ。』
『つまり、その部分はシーホークがすでに取り込みつつあったってことか。』
ジルが手を顎に当てながら言うと、マダムは頷いた。
『その説明だとそういうことだろうね。…つくづく恐ろしい男だね。どこからそんな力を得たんだか。』
『まあ僕もアヴィルさんからちょっと聞いてて確信はなかったんだけど、入ってみて確信したよ。早く黒組織を突き止めよう。』
みんな気を引き締めてまた進みだそうとした。
しかし、そのとき、セシアは違和感を感じた。
―――なんだ。胸騒ぎがする。確か、この感じは前にもあったような…
セシアは足を止めてばっと横を見た。
『…セシア?どないしたんや?』
シキが不思議そうに尋ねるのには答えずに、じっと目線の先にある果てしない森を見た。
他の者たちも足を止めてセシアの様子を伺った。
―――そうだ、これは…神田と初めて会う前に森の近くで感じたものと一緒だ。
『神田が近くにいる…』
あまりにも小さな言葉に、誰も聞き取れなかったのか、みんなセシアの目線の先を見た。
だが、すぐにみんなの顔つきが変わり、素早く身構えた。
『…何か来る。』
セシアはごくりと喉を鳴らした。