それでも、まだ。



シーホークは腕を上げた。すると、その頭上にある闇が渦巻き始めた。



――――ズゴゴゴゴゴゴッ



『な、なに…っ!?』




凄まじい地響きが起こり、神田は必死にクロにしがみついた。他の者たちも立っていられないのか、しゃがんで揺れを耐えている。



『グルル…』



クロも唸りながら立派な爪で踏ん張っているのが見えた。




そしてなんとかシーホークの方へ頭へと向けると、シーホークのかざした腕に闇が、きっとこの森を覆い尽くしていたであろう闇の一部が集まっていくのが見えた。




『ふ、ふふふふ。素晴らしい力だ。まだこれくらいが限界か…。』




そう言って腕を元に戻ると、揺れも収まった。神田は冷や汗が全身から流れるのを感じた。…戦っては駄目だ、逃げないと。



揺れが収まったことで体勢を整えた幹部たちであったが、彼らの顔も驚きと困惑に満ちていた。




『…要らない役者には退場してもらいましょう。』




そしてシーホークが神田たちの方へと手をかざした瞬間。







――――ズザッッ!!



神田は一瞬何が起きたか分からなかった。




だがしかし、我に返って前を見ると、いたはずの幹部たちがいなくなっていた。



残っていたのはクロに乗っていた神田とナージャ、そしてセシアだけであった。セシアも何が起きたのか分からないのか、目も見開いたままであった。




『…もちろん、あなたも逃がすわけにはいきません、ナージャ。』



その言葉にナージャはギリッと歯を食いしばった。だが、すぐにセシアの方をみると、腕をつかみクロの背中に乗せた。



『うわっ…!』



『行くぞ!クロ、頼む!』



『ガルルル!』  



そしてクロは3人を乗せて走り出した。





< 186 / 212 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop