それでも、まだ。
――――――
黒組織にて。
『きゃはっ!主、お帰りなさい!』
大量の返り血を浴びてポタポタとスーツから血を落としながら組織へ帰ってきたシーホークに対して、ペトラルカは瞳孔が開いた瞳を輝かせながら迎えた。
『…主、ナージャを殺したんで?』
あまりの血の量に少し驚きを含めた声で尋ねたリーヤに、シーホークはにこりと不敵に笑った。
『殺してはいませんよ。…まあ、当分動けは出来ないでしょうけどね。』
そう言ってスーツを脱いだシーホークにペトラルカは思い出したようにどこかに走っていき、そして何かを引きずりながら戻ってきた。
『きゃはっ!主、こいつの処分はどうします!?』
その手に引きずられていたのは、ボロボロになった使用人であった。その体はあちこち中身の金属がむき出しになっており、煙も出ていた。
『…捨てない…で…くだ………もう………ませんから……』
『キャハハハハハハ!何言ってんだ!お前のせいで人間に逃げられたんだぞ!』
『相変わらずうるせーなてめえは。そもそもお前が地下に行ってりゃこんなことには起こらなかっただろーが。』
『きゃはっ!うるせえよ金髪!私のせいじゃない!!』
言い合う2人をよそに、シーホークは黙って使用人の前に立った。
『…主……ゆるし、て…くだ』
――――ザンッッ!!
使用人が言い終える前に、シーホークはその頭を切り捨てた。あまりの迫力に、思わずリーヤもペトラルカも黙り込んだ。
『…使えない人は要りません。代わりはいくらでもいるんですよ。』
その眼は非情なほど冷たく、シーホークはそのまま階段を上っていこうとした。
『…っ主!そういえば、あの2人は追わなくていいんで?』
慌ててリーヤが引き止めると、シーホークは一瞬立ち止まったが、またすぐに歩き出した。
『…問題ありません。どうせあの2人だけではこの森は抜け出せないでしょうしね。時間はまだあります。』
そう言い残して姿を消したシーホークに、リーヤとペトラルカは顔を見合わせて、やれやれと肩をすくめた。
『きゃはっ!…イラついてらっしゃるな!』
『…ああ。これ以上の失態は許されねえぜ。』
そして2人もそれぞれまた主の後を追って階段を上っていった。
――――世界会議まで、あと2週間…