それでも、まだ。
そこで神田はふとあるものを見つけた。
『セシア!あれ…!』
神田は自分たちが座っているところとは離れた森の奥を指さした。セシアもその指さす方向を見た。
『あれは…』
2人が見たのは、大きな熊だった。神田とセシアが初めてこの世界で出会った時に遭遇した熊と似ている気がした。
神田とセシアは顔を見合わせると、立ち上がると見つからないように木の陰に隠れ、少し熊に近づいた。クロはいきなりの行動にびっくりしたのかどこかに行ってしまった。
『あ、クロ…!』
『静かに神田…!』
追いかけようとする神田をセシアが制した。熊は2人の方へと近づいてきていた。
後で探そう、そう思って神田は体勢を整えると、息をひそめた。
『…グルル…ゼェ……ゼェ』
熊はそのまま2人が隠れている木のそばを通り過ぎると、そのままどこかへと向かっていく。息は荒く、なんだか苦しそうだ。
『…どこに行くんだろう?とっても苦しそうだし…』
神田のつぶやきに神田は手を顎に添えて一瞬考える仕草をしたが、すぐに神田の方を向いた。
『…ついていってみよう。この森のことが分かるかもしれない。』
神田はさっきセシアがこの森に来た時、生物がほとんどいなかった、と言っていたなぁ、と思いながら、こくりと頷いた。
そして2人はそろりそろりと、物音をたてないようにしながら熊の後をつけていった。