それでも、まだ。
しばらくついていくと、熊は少し開けた場所へとたどり着いた。そこは今までの道とは違い、木に囲まれるようなスペースであり、上の方を見ると、その部分だけ木に覆われていないからか、外からの月明かりが薄っすらとその場を照らしていた。
相変わらず闇だけは覆っていたが、少し薄れているような印象を受けた。
神田とセシアが黙ってそのまま熊の様子を見ていると、熊はそこで立ち止まり、一時上を見上げていた。しかし、次の瞬間。
『…グォォォォオン!!!』
熊は悲痛な叫び声をあげて更に苦しみ始めた。ついには苦しさに耐えられなくなったのか倒れこんでしまうが、それでも上をみて立ち上がろうとしている。
『…何をしているの?』
神田は苦しむ熊の行動が理解できずに、そしてあまりに苦しそうに叫び散らす熊を少し心配しながら呟いた。
『……森の外に出たがっている、のか?』
セシアも同じように険しい顔をしながらそのまま熊の様子と見守っていた。
セシアが言うように、熊は確かに外に出たがっているように見えた。苦しみながらも月明かりが差し込む外の方へと手と伸ばしているように見える。
だが、そうしているのも長くは続かなかった。
『グォォ…』
―――ドシンっ
少し熊が静かになったと思った瞬間の出来事だった。熊は倒れこんで動かなくなってしまった。
『し、死んじゃった、の?』
暫くしても動かない熊をみて、2人は恐る恐る近づいていった。
『何が…。』
セシアがそう言った瞬間。
―――シュルルルルル…
『『―――!!』』
熊の体の周りを闇が包み込み始めた。