それでも、まだ。




『…ま、まさか…!』



神田とセシアは身構えた。先程の出来事が神田の頭に蘇った。



シーホークの不気味な笑みを思い出し、少し震えだした神田を、セシアは守るように前に立ち、刀の柄に手を添えてじっと闇に包まれていく熊を険しい表情で睨んでいた。その額にも、薄っすらと汗が滲んでいる。




―――ザァッッ




しかし、2人の予想に反して、熊はそのまま闇に包まれて跡形もなく消えてしまったが、そのあとは何も現れることはなかった。




『…シーホークは…?』




『…現れないみたいだな。』




2人はホッと息を吐きながら、また少し熊がいた方へと近づいた。



そのとき、2人の側をビュッと風が通った。そしてそのあと突然、熊がいた場所の地面から、凄まじい勢いで真っ黒な竜巻が立ち上った。




―――ゴォォォォォッッ




『―――!?なに、この風…っ!』



『…神田!掴まれ!』





まともに目も開けられないまま、セシアが神田の腕を掴み自分の方に引き寄せたのが神田は辛うじて分かった。




そして次の瞬間には、神田とセシアは体が浮いてしまっていた。




『きゃあぁぁ!!』



『…くっ!』




2人は抵抗する術もなく、そのまま凄まじい黒い竜巻に飲み込まれていった。




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