それでも、まだ。
『…どういうこと?』
神田が恐る恐る尋ねると、セシアは周りをぐるっと見渡した。
『よく周りを見てみて。ちょっと森がないところが大きくて分かりずらいけど、森に囲まれているだろ?』
言われた通りに神田が視線を横に動かすと、確かに少し遠くに木が立ち込めていて、ただ木がないのがこのあたりだけだと分かった。
『そんな…じゃあここはまだ漆黒の森の中ってことなの?』
『…たぶんな。』
神田はガクリと肩を落とした。そしてふと頭に思い浮かんだ。
―――なぜ、ここだけ森なのに木に覆われていないのだろう。
そしてまた遠くを見やると、キラキラと何かが光っているのが見えた。
『…?神田、どうした?』
じっと遠くを見て動かない神田を不思議に思ったのか、セシアも神田の視線の先を見やった。そして、セシアも同じことに気付いたようだった。
『…行ってみよう、セシア。』
『…ああ。』
2人はゆっくりと光り輝く方へと近づいて行った。
『『……あ。』』
2人の同時に呟いた。
そこにあったのは、月に照らされて光る、小さな泉であった。