それでも、まだ。
『ここはもしかして……!』
神田とセシアは泉の近くまで駆け寄ると、覗き込むようにしゃがみ込んだ。
『これが、癒しの泉…?』
神田はポツリと言った。見たところ、普通の小さな泉である。規模で言えば、神田とセシアの2人がギリギリ入ることができるかぐらいのものである。
癒しの泉というものだから、もっと神々しいものかと思っていたが、そうでもなさそうだ。しかし、泉の水はとても透き通っていて、水面で月に照らされた2人をしっかりと映し出していた。
『ナージャさんはここに行けと言っていたよな…?でも何もないな。もしかしたら違う泉かもしれないな。』
そう言って、セシアはゆっくりと泉の水に手を入れた。
―――パァァァッ
『『…!?』』
セシアが水に触れた瞬間、触れたセシアの手が輝きだした。
『な、なんだ…?』
『セシア、大丈夫?』
咄嗟に泉から離れたセシアにつられて立ち上がりセシアに近づいた神田は、その手を見て目を丸くした。
『セシア…手の傷が…!』
『え?…あ。』
水に触れた手は、先程まであった傷が嘘のように、綺麗に治っていた。
一時お互い見つめあっていた2人は、視線を泉のほうへと戻した。
『やっぱり、ここが癒しの泉なんだね。』
『…ああ。』
どうしたものか―――と2人で考えていると、耳に声が聞こえてきた。とても小さく、消え入りそうな声であった。
『…誰ですか?あなたたちは。』