それでも、まだ。
2人は咄嗟に身構えて、周辺を見渡して声の主を探した。
『…誰だ。』
セシアは険しい顔つきになっていて、手は既に刀の柄に添えていた。神田はセシアに寄り添うように、周囲を伺った。
『今聞いているのは私…質問に答えて。あなたたちは誰?』
声はどこからともなく聞こえてきて、どこに声の主がいるのか全く分からなかった。
『あの、あなたの姿を見せてくれませんか?』
神田は遠慮がちに言った。しかし、声の主は声を少し荒げた。
『嫌よ。あなたたちもそうやって私を闇に陥れる気なんでしょ…その手には乗らないわ。』
威嚇するような、それでいて怯えるような言葉に、2人は目を見合わせた。もしかしたら、この声の主はシーホークにはめられた者なのかもしれない。
『私たちは、あなたが思っているような者ではありません!別にあなたを陥れようとか、そんなことは考えていません。』
神田は必死に言った。
『嘘よ…嘘。もう誰も信じられない。』
思いつめたような声に、2人は首を傾げた。この声の主に一体何が起こったのだろうか。セシアは暫く考え込んでいたが、いっときして口を開いた。
『…どうすれば私たちが害がない者だと信じてもらえる?もしこの闇に怯えているのなら、助けるのに協力したい。』
『…本当?…ああ!また騙されそうになった…。そうね、じゃあ私の質問に答えて。あなたたちは誰?』
『私は人間政府直轄組織の者だ。この子は…、少し前にこの世界に迷い込んだ人間だ。』
セシアは神田のことを正直に話すかどうか一瞬躊躇ったが、この相手には嘘はしない方がいいと判断したのか、正直に話した。神田も不安に思いながらも相手の反応を待った。
『…人間政府直轄組織?』
声の主が驚いたような声を上げた。