それでも、まだ。
『…私たちの組織が何か?』
セシアは少し不思議そうに尋ねた。人間政府直轄組織はこの世界ではトップの組織であり、まず知らないものはいない。そう聞いていたため、神田にとっても意外な反応であった。
『…その亜麻色の髪の子が人間なのは分かってたわ…そんな匂いがしたもの。人間政府直轄組織…久しぶりに聞いたわ…。』
懐かしむように呟く声の主に2人はますます首を傾げた。
『…何かあったんですか?』
神田も尋ねたが、声の主はそれに応じずに、また質問を繰り返した。
『そういえば黒髪の子はとても懐かしい感じがするわ…。ねえ、あなたの名前は何?教えて。』
『…セシア。』
セシアは小さな声で答えた。少し恥ずかしそうだ。
『えっ!』
声の主はまた驚いた声を上げた。そして次の瞬間、癒しの泉が光り始めた。
『…!な、なに…!?』
あまりの眩しさに、神田は目を瞑った。
そして少し光が落ち着き、ゆっくりと目を開けると、癒しの泉の中に1人、女性が経っていた。
『セシア…?じゃああなたが…!』
その女性の声は先程まで聞いていた声そのもので、そこで2人は声の主がこの女性であることがようやく分かった。
女性はスラッとしていた。真っ白な長いビスチェ型ワンピースに身を包んでおり、その裾はレースになっており、綺麗に伸びた脚が風によってたまに露わになったりしている。髪はウェーブがかかったプロンドのロングヘアーであった。
その表情はセシアを見てとても嬉しそうな、しかし悲しさも伴わせているような、そんな表情であった。大きな瞳は心なしか涙で潤っているようにも見えた。
『…私を知っているのか?』
セシアは不安そうに尋ねた。もしかしたら、またセシアが幼いころに会った人物の1人なのかもしれない。
『…知ってるっていうか、その…。正確に言えば、あなたのお母さんを知っているわ。』
その言葉に、2人はまた目を丸くした。