それでも、まだ。
『…セシアだけじゃないんだ。』
レンはギュッと拳を握りしめた。その言葉に、ベルガとアヴィルはレンの方を見た。
『真理ちゃんもいた。…そしてナージャも!』
『『………!!』』
レンの叫ぶような言葉に、2人は目を見開いた。
暫くの沈黙が流れた。レンはそのままうなだれて、荒い息を整えた。
―――真理ちゃんがいたということは、やはりシーホークに連れ去られたのだろう。しかしなぜナージャと一緒にいたんだ?ナージャはなんで今まで行方が分からなかったんだ…3人は無事なのか?
何も抵抗できなかった自分を悔やみながら拳に更に力を入れた。
『…そうか。』
言葉を発したのはベルガであった。そしてレンの手に自分の手を重ね、優しく包み込んだ。
『ナージャは生きていたか…まだゆっくり休みなさい。』
そう言って手を離し、部屋を出ていこうとするベルガとアヴィルにレンは慌てた声を上げた。
『早く助けに行かないと!』
『…どうやってだ?』
立ち上がりそうになったレンを静かに制したのはアヴィルだった。
『マダムやシキだけじゃなく、お前やジルが一瞬でやられるような相手に誰がシーホークを倒す?ベルガさんや俺でも、今は厳しいだろうな。』
その言葉に、カッと頭に血が上るのが分かった。
『じゃあ3人を見殺しにするんですか!?早く行かないと3人が死にますよ?!』
はあはあと胸で息を切らしながら言うレンに、アヴィルはため息をついた。
『…別に助けねえとは言ってねえだろ。時期が違えって言ってんだ。幹部が誰もいないでやみくもに行ってどうする?てめえもまだ今は役立たずだろうが。』
その言葉にグッとレンは言葉に詰まった。…確かに、今の状況では立っていることさえ危ういかもしれない。
『…でも、早くしないと…』
またレンは俯いた。
『…それに、ナージャはちょっと分からねえが、セシアと真理は生きてる。…こいつが言ってんだ。』
その言葉にレンが顔を顰めると、気付かなかったが、ジルの寝ているベッドの脇から、ひょこっと顔を覗かせる瞳があった。
『…君は…』