それでも、まだ。


2人が要塞に近づくにつれ、はっきりと壁の様子が露わになってきた。


壁は隙間なく厚いレンガが積み重なって出来ており、神田が軽く触れてみただけでも、奥にもとても厚くちょっとやそっとでは壊れない頑丈なものであるのが分かった。


『すごい頑丈…入口も見当たらないね。』


神田がキョロキョロと周りを見ながら言うと、セシアは顎に手を当て少し考え込んでいた。


『ここまで頑丈にする必要があるのか…?外からだけじゃなくで本当に中からも出られなさそうだな。』


上を見上げると壁の先は見えず、漏れる光だけが空を照らしていた。


『どこかに入れるところはないかな…』


神田は壁沿いに歩いて何かないか探してみた。



すると、ちょっと先に要塞の中につながる川があるのに気が付いた。



神田がそのまま川に近づくと、思ったより大きな川であることが分かった。

川は勢いよく要塞の中に流れ込んでおり、そこの壁の部分だけ水が流れやすいように僅かだが隙間が空いていた。

目を凝らすと川の底には大きな水車がグルグルと動いており、このおかげで水が要塞の中に入っていることが分かった。



『…神田?どうした、何か見つけたのか?』


川岸に座り込んで覗き込んでいる神田を不審に思ったのか、セシアもやってきて同じように川を覗き込んだ。



『…セシア。』


神田はセシアの方を振り返り、いたずらっ子のように笑った。


その表情にセシアはびくっと肩を揺らした。
…きっとこの表情はろくでもないことを考えていない、とでも思っているのだろう。



『ここからなら入れるかもよ?』


セシアは深いため息を吐いた。


『…確かに入れるかもしれないが…危険すぎるだろ?』


予想通りの言葉を返したセシアに神田は目を輝かせた。



『大丈夫だよ!あの水車は結構川の深いところにあるし、流れに沿って行けばスムーズにいくよ!』



『いやまあ確かにそうだが…神田泳げるのか?』


セシアの言葉に神田は自慢げに腰に手を当てた。


『私運動は苦手だけど水泳だけは得意だったの!セシアも得意でしょ?』



『わ、分かったから、引っ張らないで。潜ってる間絶対に手を離すなよ。』



ぶつぶつ言うセシアを引っ張って、神田とセシアは思い切って川に飛び込んでいった。


< 212 / 212 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:4

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop