それでも、まだ。


『それで?セシアはどうして漆黒の森に入っちゃったの?ジルに聞いたけど、迷わず入ったらしいじゃない?』


レンはまた笑顔になってセシアに問いかけた。



『それは……。自分でも分からないんです。なんだか、行かなければいけないような気がして。』


『真理ちゃんがいる場所が分かってたの?』


『いえ、全然…。神田のことは知りませんでしたし。』



セシアが正直に話していると、レンは納得したような表情になった。


顔を俯かせ、しばらく考えていたようだが、やがて顔を上げて口を開いた。



『…今回のことはもういいよ。2人とも無事だったしね。ただ、今後一切、許可無しに入らないで。』


『……はい。でも、どうしてあの森には入ってはいけないんです?』


『……危険過ぎるからだよ。』


『何が危険なんです?あの時に現れた熊も、レンさんくらい力のある者なら、簡単に倒せたはずです。…でもレンさんは倒さなかった。撒いただけでしたよね?』



そこがおかしいのだ。あの場所にはジルもいた。


わざわざ攻撃を受け流さなくても、気絶させることくらいは出来たはずだ。



『……………。』



レンはセシアから顔を逸らし、窓の外へと視線を動かした。

それからしばらく沈黙が続いた。


外では先程から降っている雨が
まだ降り続いていた。



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