それでも、まだ。
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レンとの話を終えて、部屋に戻ってくると、真理は隅っこで体育座りで丸くなっていた。
『寝てるのか…?』
静かに近づいていくと、規則正しい寝息が聞こえてきた。
『ったく。ベッドで寝ていいって言ったのに。』
溜め息をつきつつ、そっと神田を抱き上げ、起こさないようベッドへ運んだ。
そして自身もベッドの脇に腰掛けた。
ゆっくりと、そしてじっくりと神田の顔を覗き込んだ。
髪の色と同じ亜麻色の睫毛に幼さが残った顔つきが起きているときとはまた違った印象をで受けた。
少しくせっ毛のある髪がピョンピョン跳ねていて落ち着きがないように見えた。
そっと手を伸ばし、恐る恐るその髪に指を絡める。
すると予想以上に柔らかい髪が自身の指先をくすぐった。
――気持ちいい。
そう思ってまたくるくると神田の髪でしばらく遊んだ。
『ん………。』
『―――!』
一瞬、神田が身じろいだので、
慌てて手を離す。
だが、神田は寝返りして再び寝息を立てはじめた。
『ふぅ……。』
――危なかった…。
一旦その場を離れ、任務服から着替え、寝間着になった。
そして再びベッドの脇に座る。
『はぁ……。』
本日2度目のため息である。
ため息をつくと幸せが逃げるとか逃げないとかよく聞くが、今はそれどころではない。
それもこれも、さっきの上司の
発言のせいである。
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