それでも、まだ。
『そしてこの世界は普通の人間は立ち入ることができないのさ。』
『……?』
マダムは煙を長く吐き出した。
『この世界にいるやつは、真理以外人間じゃないってことさ。』
――どういうことだろう。
レンとジルの方を見ると、2人とも複雑な顔をしていた。
『…僕たちは、実はSeakっていう種で、それぞれにある能力を持ってる。まあ、簡単に言えば、人間より少し身体能力が高いんだよ。』
『しー、く…?』
『そ。かつてSeakは人間界では存在自体を消された。』
その言葉に思わず息を呑んだ。
『…どうして…?』
『…僕らの能力を恐れたんだよ。そして、人間界で居場所を無くしたSeakは、安心して暮らせる場所を探した。』
『それが、この夜の世界…?』
『そういうこと。まあ、この世界を与えてくれたのが人間政府なんだけどね。彼らが、この世界を与える代わりにある仕事を要求したんだ。それが殺し屋だよ。』
『ひ、ひどい……!』
私たち人間が、そんなことをしていたなんて。
神田は思わず両手で口を押さえた。
『まあそれが500年も前の話だよ。当時人間に比べて少数だったSeakは、生き残るためにはそうするしかなかったんだよ。』
レンは苦々しく話した。
『………。』
神田はなんと言ったらいいのか分からなかった。
.