それでも、まだ。
『真理ちゃんが責任を感じる必要はないよ?確かに人間政府は嫌いだけどね。人間自体は好きだよ?』
レンはヘラッと笑った。
神田は眉を寄せた。
『真理、そんな顔をしないでおくれよ。私らは、もう人間を恨んじゃいないさ。ただ、注意しておくれ。』
マダムはまた神田の頭を撫でた。
その手つきは、とても優しい。
『?』
神田はマダムを見上げた。
『…だいぶ人間に対しての考えが変わってきてるのさ。もちろん、良い方向にね。ただ、中にはまだ恨みを持っていて、人間ってだけで襲うやつもいる。この組織にもさ。』
マダムはそういうとまたキセルを吹かし始めた。
『…少なくとも、ベルガさんとアヴィルさん、そして幹部は安心していい。』
ジルが静かに口を開いた。
『だが、一人で行動するときはこの階だけにしてくれ。』
ジルは真っ直ぐに神田を見つめた。
その眼は神田を心から心配していた。
『…?はい、分かりました。』
神田は首を傾げながらも頷いた。
『…この階は幹部専用のフロアなんだよ。普通は他の奴らはこの階に来れないからね。』
レンの説明に神田は納得した。
――他の階は危ない、ということだろう。
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