それでも、まだ。
神田は黙って眼を閉じた。
『僕たちを……恨む?』
脳裏に人間として生きていた結菜の綺麗な笑顔、そして夢で見た哀しい顔が浮かんだ。
神田はゆっくりと眼を開けた。
レンだけでなく、ジルもマダムも神田をじっと見ていた。
神田は深く頭を下げた。
『私は、………みなさんに、感謝しています。』
神田の行動と言動に、3人とも間が抜けた顔になった。
『確かに…結菜が殺し屋になってしまったことは、とても嫌だし、悲しいです。』
でも、と神田は続けた。
『みなさんがいなかったら、結菜とこうしてまた会えることはなかったんです。…私、結菜とやり残したことがたくさんあるんですよ?…買い物とか、旅行とか…。』
神田は結菜との思い出をもう一度思いだしながら言った。
3人は黙って聞いていた。
『…それに、記憶を無くしたことだって、結菜のことを想ってのことですよね?…もし私が結菜で記憶があったら耐えられないです。』
結菜は性的暴力を受けて、殺された。
それだけでもつらいだろうにさらに自分も殺す側になってしまったと分かっていたら―…。
『だから、私は恨んでなんかいません。また、仲良くなれればいいんです。勿論、Seakを差別することも絶対にないです。…みなさん、とっても優しいじゃないですか。』
神田は心からの笑顔を浮かべた。
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