それでも、まだ。


『んあ?誰や?アヴィルさんか?仕事追加とか言われたら堪ったもんじゃないで!』



シキは一人で無線に向かってぶつぶつ文句を言いながら無線をとった。



セシアは作業を進めつつ、その様子をじっと見ていた。



『アヴィルさん?仕事はもう無理やで!……ん?なんや、レンやないか。どないしたんや?』



電話主はレンだったようだ。

わざわざどうしたのだろうか。



『…え?ああ、一緒やで。………え、なんでや?嫌やで、どうせ………わ、分かった!分かったから!!』



シキが酷く焦っていた。


…最後らへんは微妙に脅迫されてないか?




『………セシア。』



無線を切ったシキは、神妙な顔つきでセシアを見た。



その異様な雰囲気に、セシアは作業を止めた。



『…何かあったんですか?』


セシアも慎重に尋ねた。






『よく聞くんやで。………晩飯を、組織で食えという命令が下った。』






『………………なんで?』



嫌な予感がする。

確か、今日の当番は………。



『嫌やぁ〜!!今日ジルやろ?俺は3日も寝込みたくないで!!』


『……レンさんじゃないだけマシだと思います。』



『おい!セシア!何諦めモードになっとんねん!!お前はあの餌食になってもいいのか!?』



シキはセシアの肩を強く持って揺さぶった。



『ちょ…、痛いですよ。…なら、なんかいい考えでもあるんですか?』



セシアの言葉に、シキは固まった。


『だ、だから、例えば、食べるフリをして、後で安全なのを食べるとか……あかん!レンに脅されたんやった!!』



シキは頭を抱えて嘆いた。



『完全に読まれてるじゃないですか…。』



セシアは小さく溜め息をついた。



―なんだ?どうしてだ?

新たな嫌がらせか?



…レンなら十分に有り得るだろう。



『セシア…せめて、遅く帰るで。レンの悪戯心を少しでも焦らして、飽きさせるんや。だから、残った作業はゆっくり…』
『すいません、シキさん。』




セシアは隣の段ボールを指差した。




『さっき、全部終わっちゃいました。ついでに、あと15分でこの建物が爆発するようにセットもしちゃいました。』




『おお!流石やな!証拠隠滅は大事やからな………って、何やとぉぉぉぉぉぉ!!!』





広い地下にシキの悲痛な叫びがこだましたのであった。



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