それでも、まだ。
――さらに1時間後
既に時刻は6時を回っていた。
全ての薬物を組織に送り終わり帰ってきたセシアとシキは、重い足取りで台所へ向かっていた。
『あかん…。もうすぐ辿りついてしまうわ…!でも、悔しいほどに腹が減ってるわ……!』
『……私もです。』
セシアとシキはげっそりとしていた。
…この数時間でいくらか老けてしまった気分だ。
『というか、台所で食事なんて出来るんですかね…?』
『俺もそう思ってたんや。せめて広間でって言ったんやけど、台所って聞かんくてな。…あんな異臭の場で…。』
2人は重い溜め息をついた。
そうしている間にも、着実に台所へと近づいていく。
『なんでレンもジルも食えるんやろな〜。アヴィルさんでさえ無理なのに。』
その言葉にセシアはハッとした。
――そうだ。今はその他にも…
『神田がいるのに……。』
『ん?かんだ?誰やそいつ?』
シキがセシアの呟きに反応すると、セシアはまたハッとして顔を上げた。
『あ、えっと、その…』
『おっ、オメーらじゃねぇか。』
セシアがシキに説明しようとすると低くハスキーな声がセシアの声を遮った。
『あ、アヴィルさんや!』
シキがニッと笑って手を振ると、アヴィルも2人の正面から手を挙げて歩いてきた。
『今終わったのか?…すまなかったな、面倒な仕事をさせちまって。』
2人の窶れた顔を見て悟ったのだろう。アヴィルは申し訳なさそうに言った。
『いやいや!違うんやで!…まあ、確かに疲れたけどな。』
『なら何が違ぇんだ。…もしかして、晩飯か?』
アヴィルがニヤリと笑った。
『『なっ……!』』
セシアとシキは同時に驚いた。
『ま、まさかアヴィルさんも…?』
『ああ、そのまさかだ。』
アヴィルはポケットから煙草を取り出して火を点けた。
『アヴィルさん、なんでそんなに落ち着いてるんや!寝込みたいんか!?』
『ククッ、まあ慌てるな。行きゃあ分かる。』
アヴィルが楽しそうに話すのを見て、セシアとシキは顔を見合わせた。
『…おい、アヴィルさんが笑ってるで。』
『もう既にやられちゃったんですかね…。』
『おいコラ。聞こえてるぞ。それに俺は正気だ。』
アヴィルが顔をしかめて睨み、
2人は苦笑いを浮かべた。
『ったく。ほれ着いたぞ。開けてみろ。』
いつの間にか台所に辿りついたらしい。
――なんか、いい匂いが…!?
セシアは内心とても驚きつつ、ドアを開けた。
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