それでも、まだ。
そこに広がっていた光景を見て、2人は驚いた。
『あ、お帰りー。早かったね。』
そこには、美味しそうな料理がたくさん並んでいた。
『すごいでしょ?全部あの子が作ってくれたんだよ。』
レンは料理を運びながら嬉しそうに神田の方を見た。
神田まだ途中の料理をしながら照れ臭そうに笑っていた。
『ん?誰や?』
シキが怪訝そうに神田を見ると、神田の隣で手伝っていたマダムがゆっくりと振り返った。
『昨日からここにしばらくの間居ることになった子さ。…まぁ後で詳しいことは説明するさ。』
今気付いたが、マダムはエプロンを着けている。
…ものすごくレアかもしれない。
『あっ、か、神田真理です。よろしくお願いします。』
神田は慌てて頭を下げた。
それを見たシキは慌てた。
『あ、いやいや、責めたわけじゃないで!俺はシキやで。こちらこそよろしくな!』
シキがニッと笑うと、神田もホッとしたように笑った。
『それにしても、なんで黙っとったんや〜。分かってたら、もっと早く帰ってきたで…。』
シキは恨めしそうにレンを見た。
『え?だって、その方が面白いじゃない?』
レンがさも当たり前とでも言いたげに答えたのを見て、シキはうなだれた。
『お前の性格すっかり忘れてたわ…。おいセシア、お前もなんか言ったれ…ってあれ?セシア?』
シキは辺りを見回したが、いつの間にか誰もいなかった。
代わりに、テーブルに早々と座っているレンとシキ以外の面々が見えた。
『何やってるんですか、シキさん。これすごく美味しそうですよ?』
『え?あれ?セシア?』
『おいテメーら、早くしやがれ。料理が冷めちまうだろうが。』
『え?アヴィルさんまで?』
『神田、ときにこの漬物、もう少し多く貰ってもいいか?』
『あ、いいですよ。ちょっと待っててくださいね…。』
『あれ、聞いてるかー?』
『あ、ずるいよジル。じゃあ僕は煮物多く貰うからねー。』
『ん?レン、いつの間にテーブルに行ったんや!?』
『ついでに私のお吸い物も継ぎ足しておくれよ。』
『おーい、俺の存在忘れてるでー!』
『早くしろテメーら。』
『アヴィルさんはせっかちだなぁ。早く食べたくて食べたくてしょうがないんですか?』
『おーい!!!』
『ふざけんな、それはオメーだろうが。』
『アヴィルさん、早く食べましょう。ジルさんがずっと黙って待ってます。』
『あ?ったく、分かったよ。…おい、誰か忘れてねーか?』
『気のせいですよ。はいせーのっ!』
『『『いただきまーす。』』』
『……俺の存在ぃぃぃ!!!』
またシキの叫び声が響くのであった。