それでも、まだ。
――――
なんだかんだでみんなが食べ終わった後。
神田とセシアはセシアの自室に戻ってきていた。
『神田、今日の晩御飯は美味しかった。…また作ってくれ。…甘味もな。』
『…はい!…喜んでくれて良かった。』
セシアが照れ臭そうに言ったのを見て、神田は嬉しそうに微笑んだ。
この笑顔は――…。
なんだかとっても自分を安心させてくれる。
…多分私だけじゃない。
レンさんもジルさんもシキさんも
マダムも、アヴィルさんでさえ…。
……不思議な子だ。
セシアは神田に見えないようにこっそりと頬を緩ませた。
『セシアさんは、本当に甘味が好きなんですね。』
神田は楽しそうにセシアの顔を覗き込んだので、セシアは慌てて顔を引き締めた。
『あ、ああ…。…抹茶のわらび餅とかは大好きだ……、あっ!』
セシアは思い出したように声を上げた。
『どうしたんですか?』
神田はいきなり大声を出したセシアに驚きながらも、心配そうに尋ねてきた。
…忘れてた。
神田に会う前、レンとジルと供に新しく店に行くはずだったのだ。
限定品の抹茶のわらび餅を食べるために。
原因は自分にあるのは分かっているのだが。
――まあいいか。
セシアは神田を見た。
『……?』
神田は不思議そうにセシアを見つめ返した。
『今度…一緒に出掛けないか?』
――神田と会えたのだから。
セシアがふわりと笑うと、神田は大きな眼を更に大きくした。
『………え?』
神田があまりにもぽかんと間の抜けた顔をしたので、セシアはまたクスリと笑った。
――信じてみたい。この人のことを知りたい。
もう一度だけ――…。
『イヤか?』
セシアが少し残念そうに言うと、神田はハッとして慌てて首を振った。
『とととんでもないっ!……行きたいっ!行きたいです!!』
神田が身を乗り出したので、セシアは噴き出した。
『フフッ、…なら、約束な。』
『………はいっ!』
神田もまた、満面の笑顔で頷いたのであった。
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