それでも、まだ。
『ん?レンと真理やないか!なんやー、見に来たんか?』
ジルとの勝負を終え、タオルで汗を拭っていたシキが2人に気づき、近づいてきた。
『うん。今来たばかりだよ。ね、真理ちゃん。』
レンに話を振られ、呆然としていた神田はハッと我に帰ると、慌てて返事をした。
『は、はい!…それにしても、2人とも凄いですね。さっきの技みたいなのは何ですか?』
神田がシキに先程の様子について尋ねると、シキはああ、と言ってタオルを首に回した。
『あれが俺らSeakの能力やで。』
『…あの地面が割れたり、凍らせたりすることがですか?』
『んー、って言っても、それぞれ能力は違うけどな。例えば、俺は地の能力、ジルは水の能力を持ってるんや。』
シキの説明を聞いて、神田が納得したように頷いていると、レンは木刀を取り、修業場の中に入っていった。
『…ちなみに僕は、炎の能力を持ってるんだよ。』
そう言ってレンが木刀を軽く振ると、木刀から火が出始めた。
『す、すごい……。』
神田が目を丸くすると、シキは苦笑しながら耳打ちした。
『そりゃあ、レンはこの組織で1番の実力者やからな。…恐ろしいんやで〜。』
――そういえば、私がこの世界に来たときも、片手で熊の攻撃を受け止めていたはずだ。
神田はひとり静かに納得しながらレンの様子をしばらくじっと見ていた。
レンは木刀に炎を出したまま、ゆっくりと素振りを始めた。
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