それでも、まだ。


『セシアやマダムも何か能力を持ってるんですか?』


神田はレンの様子を見つつ、シキに尋ねた。



『勿論や。マダムは闇の能力で、セシアは…』
『ん?神田来てたんだ。』



シキが話そうとしたとき、横の更衣室からセシアとマダムが出てきて、2人に声をかけた。



セシアもマダムも普段の服装と違っていて、神田は新鮮な印象を受けた。



『…ジルさんとの試合は終わったんですか?シキさん。』



セシアが髪を結び直しながらニヤニヤしてシキに尋ねると、シキはムッと顔をしかめた。



『また負けたわ!チクショー!後で覚えとけよ、セシア!!』



『セシア、なんかあったの?』



この頃セシアと親しげに話せるようになってきた神田がコソッと聞くと、セシアは悪い笑顔を浮かべた。



『ジルさんとシキさん、どっちが勝つか賭けてた。…シキさん1回もジルさんに勝ったことないのに。フフフ、これで餡蜜は私のもの……!』



『……セシア、恐いよ?』



薄気味悪い笑いをこぼすセシアをよそに、マダムは辺りを見回した。



『それで、そのジルはどこに行ったんだい?』



『え?…ホンマや、どこ行ったんやろ。給水所か?…スマン、真理。ちょっと見に行ってくれへんか?給水所は隣にあるからな。』



『あ、いいですよ。ついでに、皆さんの水も持ってきますね。』



そして神田は、シキのよろしくな!という声を後ろに聞きながら修業場を出ていった。


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