それでも、まだ。


『なんでセシアの写真が…?』



神田は驚いてまじまじと写真を見た。



しかも、写真に写っているのは幼いころのセシアである。



『しかも隣に写っているのって…。』



隣で幸せそうに笑っているセシアによく似た大人の女性。



これはまさしく――…



『セシアのお母、さん…?』



神田の心臓はバクバクと音を立ち始めた。



――いや、それはおかしい。



セシアがかつて人間の頃、物心ついたときから両親がいなかったはずだ。



――父親は他の女と逃げ、母親は自分を産んですぐに死んだ――



セシア、もとい結菜が悲しげにそう話してくれたことを神田は今でも覚えている。


セシア自身、思い出となるような物も何もないと言っていた。



ましてや写真なんて――…。





『…誰だ。』



突然、給水所に低い声が響き渡った。



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