それでも、まだ。
『――っ!』
神田の身体がビクリと跳ねた。
咄嗟に写真を服のポケットに隠すと、しゃがみ込んだままゆっくりと声がした方を振り返った。
するとそこには、いつ入ってきたのか、大柄な男性が静かに立っていた。
男性の持つ威圧感は一気に給水所をピリピリとした空気に変えた。
『――…っ。』
あまりの威圧感に神田が声も出せずに固まっていると、男性はまじまじと神田を見つめた。
『もしや……。君、名は何という?』
男性が静かに、しかし僅かに驚きを含ませて神田に問いかけた。
多少空気が軽くなったのを感じた神田は、立ち上がるとペこりと頭を下げた。
『こ、この度組織にお世話になることになった神田真理です。』
神田が恐る恐るそう言うと、男性は今までの威圧感が嘘のように豪快に笑った。
『ハハハ、やっぱりか。…顔を上げてごらん。』
言われて神田がゆっくりと顔を上げると、男性は人の良い表情で神田に微笑んでいた。
『申し遅れた。…私は、この組織のボスである……ベルガだ。』
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