それでも、まだ。
―――
『ハハハハ、なるほど、それで此処にやってきたのか。』
神田とベルガが会ってあれから数分。
神田はこれまでの経緯をベルガに話していた。
ベルガも微笑みながら黙って神田の話をしっかりと聞いていた。
そのすべてを包み込むようなベルガの穏やかな雰囲気に、神田はすっかり安心感を抱いていた。
『それは大変だったろう。…こんな組織だが、帰れるまでゆっくりとしていくといい。』
ベルガがほんの少し切なそうな顔をして言ったのを見て、神田は慌てて首を振った。
『いえそんな!皆さん私なんかに良くしてくれますし、本当に優しい方たちばかりで…!』
神田が手をパタパタさせながら必死に言うと、ベルガは一瞬眼を大きくさせたが、すぐに頬を緩めた。
『…そう言ってくれると嬉しいよ。真理さんは優しいな。』
『………。』
嬉しそうとも悲しそうとも言えないベルガの複雑な表情に、神田は押し黙った。
そしてそのまま二人の間に沈黙が流れたが、しばらくしてベルガが思い出したように口を開いた。
『そういえば…どうして真理さんは此処に居たんだい?』
その発言に、神田は一瞬呆然としたが、目的を思い出し、顔を青ざめた。
――まずい。忘れてた。早く水を持って行かないと!
…あ。でも水がどこにもないんだっけ。
そのとき、給水所の扉が音を立てて開いた。
『…ベルガさん、帰ってきていたんですか。…神田も何故此処に……?』
そこに居たのは両手に水の入ったペットボトルをたくさん持ったジルだった。
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