それでも、まだ。
『ジルさん!』
神田はパタパタとジルの方に駆け寄った。
『神田…?…もしかして、水を取りに来たのか?』
ジルが持っていたペットボトルをテーブルに置きながら聞くと、神田はコクりと頷いた。
『そうなんです。でも、水がどこにもなくて…。それで困っていたらベルガさんが此処にいらっしゃったので、少し話していたんです。』
神田がベルガの方を見ながら嬉しそうに話すのを見てジルはフッと微笑むと、そのまま視線をベルガの方へ向けた。
『…お帰りなさい、ベルガさん。』
『ああ、ただいま。…特に変わったことはなかったか?』
『はい、特には。…それにしても、どうしてわざわざ給水所へ?』
『皆が修業しているところを見ようと思ってね。そしたら此処に気配を感じたんだよ。…真理さんだったんだがね。』
ベルガが笑顔でそう言うと、ジルも納得したように微笑んだ。そしてまたペットボトルに視線を移すと、蓋を開けはじめた。
『…神田、何か水を入れる容器を取ってくれ。』
『は、はい!』
ベルガはまたパタパタと動きはじめた神田と静かに作業を続けるジルを交互に見て更に笑みを深くしていたが、不意に何かに気づいたようにおもむろに口を開いた。
『……さぁ、二人とも。修業場へ急ごう。今、面白い対決が起こってるぞ。』
『面白い対決…?今…?』
神田が動きを止めてキョトンとしてベルガを見ると、ベルガは声を出して笑った。
『ハハハハ、真理さんも釘付けになると思うぞ。…レンとセシアの対決さ。』
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